5月8日に日本の水際対策終了へ 導入される「感染症ゲノムサーベイランス」とは?

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5月8日に日本の水際対策終了へ 導入される「感染症ゲノムサーベイランス」とは?

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新型コロナウイルス関連の水際対策は5月8日に終了へ

日本政府は4月3日、新型コロナウイルスを季節性インフルエンザと同じ「5類感染症※」へ引き下げることに伴い、新型コロナウイルス関連の水際対策を5月8日午前0時に終了すると発表しました。現在、日本へ入国・帰国する全ての渡航者は「3回以上のワクチン接種証明書」または「出国前72時間以内に行ったPCR検査による陰性証明書」の提示が義務付けられていますが、同日より不要となる見通しです。
一方、新たな感染症の防疫を目的として、政府はウイルスの遺伝子情報を収集し解析する「感染症ゲノムサーベイランス」を導入すると表明。「感染症ゲノムサーベイランス」はイギリスやドイツなど多くのヨーロッパ諸国が強化している取り組みで、脅威となる感染症の経路や病原体の変異速度、状況の監視を目的としています。
松野官房長官は「5月8日より同システムを成田空港・羽田空港・中部国際空港・関西国際空港・福岡空港で導入し、入国・帰国時に発熱や咳などの症状がある渡航者に対し任意でゲノム解析を用いた検査を行う」とコメント。直接の感染抑止からウイルスの監視へ、方針の転換を示しました。
※「5類感染症」とは
感染症法で定められた危険性を示す区分のひとつで、最も危険性が低いカテゴリです。5月8日より実施される基本的感染症対策の詳細は、新型コロナウイルス等感染症対策推進室「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付け変更後の基本的感染対策の考え方について」をご確認ください。

「感染症ゲノムサーベイランス」とは?

「感染症ゲノムサーベイランス」とは、遺伝子情報(ゲノム)の監視(サーベイランス)を意味し、病気や感染症の原因となる微生物の遺伝子情報を収集・分析することで感染状況や変異、耐性などを把握する取り組みです。
具体的には受検者が提出した検体(血液や唾液など)に含まれる病原体の遺伝子情報(ゲノム)を分析・比較し、「病原体の種類や株の特定」「薬剤に対する耐性の確認」「感染リスクの評価」「治療法の研究」を行います。
ゲノム解析を用いた監視システムは以前から存在していましたが、普及したきっかけは2020年に発生した新型コロナウイルスの世界的流行です。世界保健機関(WHO)によると、2021年3月時点で54%だった普及率は2022年1月に68%まで上昇。情報を公開した国は、1年間で43%の増加となりました。コロナ禍の中、各国がゲノムサーベイランスを共有することで変異ウイルスへの迅速な対処を可能とし、その後のワクチン開発へとつながっています。

「感染症ゲノムサーベイランス」により期待される効果

感染症ゲノムサーベイランスの普及・進歩により、今後期待される効果は下記の通りです。
感染症対策の迅速化
感染症の発生や広がりを早期に検出することができるため、感染症対策の迅速化が可能となります。また、ゲノム情報を解析することにより治療法やワクチン開発の効率化が期待されます。
治療・予防薬に対する耐性の追跡
治療・予防薬の投与により病原体は耐性を持つことが確認されています。病原体の起源や伝播経路の特定、新たな耐性遺伝子の発見から薬剤の効果を予測することで、耐性を獲得した病原体の発生・蔓延の抑止が可能となります。
世界的な感染症対策の強化
国境を超えて伝播する病原体の追跡にはゲノムサーベイランスの技術が必須です。ゲノム情報の国際的なシェアリングは今後さらに進むことが予想され、より効果的な感染症対策の実現が期待されます。
新たな感染症の発見
今後も未知の病原体による世界的感染拡大が発生する可能性があります。感染症ゲノムサーベイランスで発生を早期に発見することで、迅速な初期対応が可能となります。

参考元:世界保健機構(WHO)

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