EES(欧州出入国システム)とは?ETIASとの関連についても解説
更新日 : 2025/03/19
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EES(欧州出入国システム)とは
EES(出入国システム)とは“Entry/Exit System”の略称で、ヨーロッパ諸国にて90日以内の滞在を希望する渡航者を対象とした自動登録システムです。ヨーロッパ全土の安全保障を目的として導入が予定され、偽造身分証明書をより効率的に特定し不法滞在(オーバーステイ)を抑止します。同システムはシェンゲン協定加盟国のほか、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイス国籍以外の渡航者が利用可能です。EESはビザやETIAS(エティアス)と異なり、事前申請の必要はありません。
導入後は空港の搭乗ゲートにパスポートをスキャンすることで、氏名、パスポート情報、出入国記録などの渡航者情報が自動で登録されます。
EESはEU加盟国の合意を得るため再三の会議と延期を経て、2025年内の導入を予定しています。
EES導入の背景
EES導入の背景には、ヨーロッパ全土にわたる国境管理の強化が最大の目的として挙げられます。欧州委員会は国境を越えた犯罪やテロ行為撲滅のため、ヨーロッパ各国で情報を共有する方針を示しました。EESにて登録された入国記録などの情報はシェンゲン協定加盟国の国境警備局に共有されるため、犯罪者を迅速に特定しテロ行為などの抑止が期待されています。また、渡航者のパスポート情報を管理するため、非合法な手段で入国した移民の対応や不法滞在者の早期発見も見込まれます。シェンゲン協定加盟国への入国者が増加するなか、手続きを簡略化し入国審査の効率化も期待できるでしょう。
欧州委員会は導入準備を進めるなか、EU諸国に安全同盟を提唱しEESを重要な政策課題に位置付けました。2016年の発表では2020年の導入を目指す意向でしたが、現時点では2025年内に運用が開始となる見込みです。システム導入後は指紋採取および顔写真の撮影が行われるため、従来の審査官による入国チェックが不要となります。渡航者の出入国データは電子的に暗号化され、各国の国境管理局、警備当局、ビザ発給業務を行う領事館などEU加盟国当局が安全保障を目的として情報を共有します。出入国記録や入国拒否履歴などの情報も確認できるため、シェンゲンビザの付与や延長など審査基準にも利用する見通しです。
EESはETIAS認証済の渡航者だけでなく、ビザを取得してシェンゲン協定加盟国へ入国する方も利用対象となります。
シェンゲン協定加盟国におけるEES導入後のメリット
- 国境管理の強化で国際犯罪やテロの抑止
- シェンゲンビザで入国した長期滞在者の特定と不法移民の抑止
- 渡航情報の暗号化によりスムーズな入国審査を実現
EESの対象者は?
EESは、90日以内のヨーロッパ滞在を希望する渡航者を対象とした自動登録システムです。ビザ(査証)取得の有無に関わらず、日本を含むEU諸国外の国籍者が対象となります。また、EU加盟国以外にアイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイスへの渡航者もEESと同様の措置が適用となる見込みです。
EES導入後は入国審査でパスポートへの捺印が省略され、指紋採取および顔写真の撮影が行われます。各国の空港に設置される専用機器やモバイルアプリで事前に情報を登録することで、さらに入国審査の手続きを簡略化することが可能です。ただし、事前に情報登録を済ませた渡航者も従来の入国審査を行う必要があるため、列に並び待機中に必要書類を用意しましょう。
EESが導入される国は?
2025年内にEESシステムの導入を予定している国は、現時点で以下の30か国です。(2025年3月現在)
EES導入後はEU諸国外の国籍者が以下の国へ渡航する場合は、モバイルアプリまたは空港内に設置される専用機器での事前登録で入国審査がよりスムーズになります。
EES対象国
- オーストリア
- ベルギー
- ブルガリア
- クロアチア
- チェコ
- デンマーク
- エストニア
- フィンランド
- フランス
- ドイツ
- ギリシャ
- ハンガリー
- アイスランド
- イタリア
- ラトビア
- リヒテンシュタイン
- リトアニア
- ルクセンブルク
- マルタ
- オランダ
- ノルウェー
- ポーランド
- ポルトガル
- ルーマニア
- スロバキア
- スロベニア
- スペイン
- スウェーデン
- スイス
- キプロス
※EESは、2025年よりシェンゲン協定へ加盟するキプロス国内の空港でも導入を予定しています。
EESで収集される情報
EESシステムは、国境警備に関連する以下のデータを収集する予定です。暗号化による照合と電子的な保存を行います。
- 顔認証と指紋のデータ
- 申請者の氏名
- 出生地と生年月日
- 国籍と性別
- パスポート番号、発行日、有効期限などのパスポート情報
- シェンゲンビザまたはETIASに関連する情報
- 入出国の履歴と日付
- 入国拒否履歴
- 不法滞在(オーバーステイ)の日数
これらのデータは暗号化による照合と電子的な保存を行います。国境警備強化の目的以外で使用されることはなく、移民局およびビザ当局など限られた職員のみが確認を行います。
また、短期滞在ビザを取得したうえでヨーロッパ諸国へ入国する方は、すでに指紋情報がビザ情報システムに保存されているためEESの登録対象外となります。
EESで収集されたデータの保管期間は?
EESにて登録されたデータは情報ごとに保管期間が異なり、所定の期間が経過した段階で自動的に消去されます。
出入国や入国拒否履歴は登録日から3年間保管され、氏名、生年月日などの個人情報を含むデータは最終出国日または入国拒否日から3年と1日になります。
また、パスポートに出国記録がない場合は、滞在有効期限から5年間にわたりデータは削除されません。
収集されるデータの種類 | 保管期間 |
入出国記録、入国拒否履歴 | 登録日から3年間 |
個人情報(氏名、生年月日などを含む) | 最終出国日または入国拒否日から3年と1日 |
出国記録がないパスポート情報 | 滞在有効期限から5年間 |
ヨーロッパ諸国へ渡航可能なEU以外の市民とその家族・居住証明書を所持していない方・EU外国民やスイス国民に同伴している方の出国記録 | 出国日から1年間 |
ヨーロッパ諸国へ渡航可能なEU以外の市民とその家族・居住証明書を所持していない方・EU外国民やスイス国民に同伴している方の出国記録がないパスポート情報 | ヨーロッパ諸国での滞在有効期間を算出する渡航者の対象外となるためデータは保管されません |
EESとETIASの違い
EESとETIAS(欧州渡航情報認証制度)は、システムの内容や利用目的が大きく異なります。EESはヨーロッパ諸国に入国する「渡航者情報を記録するシステム」で、入国手続きの効率化やテロ行為の抑止が最大の目的です。渡航者の出入国記録やパスポート情報を暗号化し、データベースにて一元管理されます。
一方のETIASは、ヨーロッパ諸国へ入国する際に必要となる「電子渡航認証制度」です。国境のセキュリティ強化や各国の安全保障を目的に導入が進められ、渡航者が入国に相応しい人物か事前に審査を行います。審査で承認された渡航者は、ビザを取得せずに90日以内のヨーロッパ滞在が認められます。また、EESは空港で利用できる管理システムのため申請は不要ですが、ETIASは手数料を支払い事前の取得が必須です。
EESとETIASは管理システムで連動しているため、ETIAS認証済パスポートの提示により自動的にEESが有効となります。EESは初回登録の際に顔写真の撮影と指紋採取を行いますが、二度目以降の渡航時には同手続きが不要です。
EESとシェンゲンビザの違い
EESは事前の手続きは必要なく、空港到着時に利用する自動登録システムです。空港の搭乗ゲートにてパスポートをスキャンすることで、暗号化によるパスポート情報が登録されます。ビザを利用する際も適用されますが、短期滞在ビザを取得して入国する方は指紋採取の必要はありません。EESのデータは大使館や領事館にも共有されるため、ビザ発給の審査にも影響します。
一方のシェンゲンビザは、ヨーロッパ各国共通で利用できる利便性の高い査証です。シェンゲンビザを取得することでヨーロッパの周遊が認められ、各国にて新たなビザを申請せず自由な往来が可能となります。シェンゲンビザの申請には、渡航目的、パスポートの残存有効期間、滞在目的を証明できる資料の提出などが必須です。提出後は各国の大使館にて領事官との面接が必要となり、渡航が認められた方は一定の期間を経てビザが発給されるため早めに手続きを行いましょう。
また、シェンゲンビザを取得してヨーロッパへ渡航する方は、ETIASの申請は不要です。